inswatch Vol.75 (2002.01.07)

====for agents of insurance================================ weekly =====

【 inswatch 】Vol.75

=============================================== Vol.75  2002.1.7=======
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■■■ もくじ ■■■
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【1】第1回保険代理店経営実態調査のお願い          長   忠

【2】編集人会議「いし・なか井戸端問答」
=2002年の損害保険マーケットはどうなるか=

【3】ビューポイント「石さんの保険業界、単眼、複眼」     石井 秀樹
=生保業界2002年、更なる変化の予感=

【4】Webコラム「ホームページnyaoの勝手に保険講座から」  森田 直子
=ホームページから見えるもの(18)ITと、人の不安感=

【5】RMの観点(15)                    岩瀬  治
=焼肉店とお客の「リスク回避」心理=

【6】営業のこころ                      橋本 佳子
=新年の思いと脳の活性化=

【7】代理店の座標軸                    佐喜本 敦子
=我が師はお客様(6)感謝の心=

【8】半歩先行く代理店
-1 《リスクマネジメント》              鈴木 英世
=アドバンス氏行状記-その18
代理店の提携・合併と生き残り=

-2 《マーケティング》                原  桂一
=IT時代の代理店マーケティング(15)
日本版401Kのマーケティング考察=

【9】e-ビジネスと代理店経営                稲葉 幹雄
=保険会社のWEBサイトの変化=

【10】代理店ダイアリー                    武山 敏彦
=「成り番、休み番」 6~真実(ほんとう)の信用力(2)=

【11】保険と流通の今                     中崎 章夫
=あいおい損保の3段階専業代理店大型化構想=

■ 編集後記

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■ 投稿方法・バックナンバー閲覧サービスのご案内

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【1】【第1回保険代理店経営実態調査のお願い】        長   忠
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新年、明けましておめでとうございます。本年も、引き続きinswatchご愛読と
ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

さて、早速ですが、年末特集号でお知らせした、第1回保険代理店経営実態調
査のご案内です。

今回の調査は、第1回ということで、基本的な経営状態の把握を目標としたい
と考えています。分析の枠組みとしては以下のとおりです。規模・成長性・生産
性・収益性・安定性の5分野とそれを総合した経営力を判定いたします。
http://www2.biglobe.ne.jp/~cho/edoc010502/sld011.htm

1999年度と2000年度の決算書(青色申告)をご用意頂いて、17問のアンケー
トにご回答お願いします。後日、ご回答頂いた皆様に、分析結果とそれに基づく
自己診断チャートをお送りします。診断チャートを埋めて頂くことで、自社の客
観的位置付けをご判断出来ます。

小生の代理店コンサルティングの現場でも感じることですが、最近、トップ代
理店においても、経営の格差が拡大しているようです。今までの代理店経営は、
いわば横並びで、自社のポジションを意識する必要はありませんでしたが、これ
からは、自社の客観的位置付けを見据えて経営することが重要になります。

以下は、99年2月11日付けで保険毎日新聞損保版に書いた小生の記事です。
http://www2.biglobe.ne.jp/~cho/coiumDG/ren4.html
手数料自由化の先送り等でここに書かれているテンポより遅れていますが、こ
れから代理店は、一匹狼の個業タイプと組織で動く企業タイプに2極化する中で、
経営格差が拡大して行きそうです。
http://www2.biglobe.ne.jp/~cho/edoc010502/sld002.htm

年末特集号で、「企業経営の座標軸」を定める基本は、自社の客観的位置付け
が見えることと申し上げました。今回の調査をスタート台にして、皆様の積極的
ご参加により継続的に調査を行い、皆様が、本調査を契機にして、お互いに切磋
琢磨して経営のレベルアップを図られることを、ご支援できればと考えておりま
す。

本調査のお手本に、IIAA(Independent Insurance Agents of America:米国最
大の独立系保険代理店組織)が、毎年行っている有力代理店に対する経営実態調
査(BestPracticesStudy)があります。大変詳細で素晴らしい調査ですが、皆
さんのご参加とご協力で、これに一歩一歩近づけたらと希望しております。
http://www.reaganconsulting.com/research/bp2001/gateway.html

今週金曜日(11日)に、ご依頼のメールを皆様にお送りしますので、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。具体的方法はメールにてお伝えしますが、当社
ホームページにアクセスして頂き、アンケートのご記入をお願いいたします。

記入にあたり、1999年度と2000年度の決算書(青色申告)が必要となりますの
で、お手数ですが金曜日までにご準備お願いいたします。

(経営数理研究所代表inswatch発行人)
http://www2.biglobe.ne.jp/~cho/
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【2】編集人会議「いし・なか 井戸端問答」
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2002年の損害保険マーケットはどうなるか

N 2002年の保険業界のどこに注目するかだが、損保間の合従連衡の行方はほぼ
見えつつあるが、生損保間の関係如何が鋭く問われるところとなろう。まずはこ
の1月に東京海上の決断が注目されるところだ。損保、生保間の相互補完の動き
は他にも見られるが、この面でのもたつきは大きなハンディとなりかねないだけ
に、経営選択が問われるところとなりそうだ。

I 銀行の不良債権がらみでの展開も気になる。流通、建設やIT関連企業の先行
きに重大な関心ももたれている。4月銀行のペイオフが実施となると預金者の銀
行選別はさらに厳しくなる。愛想を付かされるところが出てきて不思議でない状
況だ。こうした影響は保険業界も受けだけに本年はさらに厳しい局面を迎えそう
*受ける

だ。相次ぐ経営破たんで信用面で契約者サイドから厳しい選択にさらされている
生保、損保についてもリスクのプロが再保険のリスク管理面でのお粗末さを露呈
したことからかつてない不信も出始めている。顧客サイドからの保険会社選択が
厳しくなるだけでなく、保険という産業そのものに対する批判を惹起しかねない。
産業的な観点に立つと大きな危機的状況にあるといえる。

N 国内勢は生損保ともに、少数の保険グループに絞り込まれてきた。経営のス
ピードを速め、合従連衡を活発化してきた結果だが、果たして思い通りのシナリ
オで事が運んでいるのか。読み違えもかなりありそうで、こうした成否が大きく
今後を左右してきそうだ。

I 自社の行く末に大きな不安を抱く社員が、中堅のみならず、大手でもかなり
広範に見られるのも現在の複雑な状況を見事に物語っている。後は経営に任せて、
と簡単にはいかない局面に突入してきている。

N 前から感じてきたことだが、一連の合従連衡について、保険のメーカーとし
てのそれなりの狙いはあるのだろうが、顧客にとってどのように事業のあり方が
様変わりし、それがどのようにプラスに働くのかが、よく見えない点が不満だ。
経営哲学が必ずしも明確に示されていない。勢い、規模とかで云々されることに
なる。

I すでに合併、統合を果たしたところでも、当初考えられなかったようなシス
テム上のトラブルに見舞われたり、企業文化の違いが予想以上で現場混乱をきた
*現場の

したりで、てんやわんやで効果を出すに至っていないところも見られる。そんな
状態で、外国のプレーヤーや業際競争に本当に打ち勝っていけるのか、疑問なし
としない。

N 代理店サイドの保険会社に対する見方も大分変ってきた。なんでも保険会社
任せにしていると顧客を守りきれないのではないか。取引先のことをもっときち
んと理解しておかないといけないのではないか、と。

I 代理店による保険会社選びはそう簡単ではない。保険会社サイドからの選別
も強まりそうだ。それだけに、取引先のリスクを分散するためにどのような事業
モデルが現実的かを検討していく段階に入ったといえそうだ。

N 保険会社と代理店の関係も構造的に変革期に入っている。昨年4月の代理店
手数料体系の変更は、2003年4月に完全自由化となる。それをにらんだ動き
が、本年は出てくるものと思われる。あるべき代理店モデルについても、保険会
社主導で提起されてくるだけでなく、代理店自らも、新たな代理店モデルの提起
をしていくことが望まれる局面になった。

I 保険のチャネルモデルについては、いろいろな切り口が提起されだすように
なる。マーケットを有する企業や団体を新たなチャネルとして再把握する試みも
多様な展開を取りそうだ。また、雇用の流動化局面に応じた柔軟な人材の活用も
活発化しそうだ。

N こうした保険市場をカオス(混沌)として捉える見方もある。新たなビジネ
ス環境創造の営みが始まったともいえるが、それは顧客の支持を得られるものと
なっていくかどうか、そのための主たる担い手として相応しいのが引き続きプロ
フェッショナルな代理店事業家だといえるのかどうか、まさにその点が問われて
きそうだ。

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【3】ビューポイント「石さんの保険業界、単眼、複眼」
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生保業界2002年、更なる変化の予感

◇厳しさの中の船出
新しい年を迎えた生保業界だが、大手各社においてはいよいよ正念場を迎える
年となりそうだ。新契約の低迷と解約の増加、保有の減少といった業績の低下に
加え、逆ざや構造を抱えたままの厳しい船出となった。年度末業績に対する各社
の予測でも保有は減少、逆ざやは横ばいと明るさは見えない。こうした中、新年
の4日には各社社長の年頭訓示が行われたが、いずれも信頼性の確保、コンプラ
イアンスの遵守といった顧客からの信頼への取り組みと、社内的には事業費削減、
保有純増による体力強化、さらに社員に対しては「自信」を持って積極的に行動
することを求めている。

個々の会社ではそれぞれ合併や提携、新規商品の発売など個社ベースの取り組
みについて触れられているが、全体的な変化をどう見るのかといった点で今一つ
明確になっていないのは、まずはみずからがどう生残りを図るかといった経営の
抱える課題の大きさの反映であろうかと思う。

◇各社の方向より鮮明に
2002年は業界全体が大きく変わる。朝日生命は今年3月をめどに東京海上あん
しん生命に新契約に関る事業を譲渡し、基金を増強して既契約の管理会社になる。
2003年3月には株式会社化を図り、東京海上あんしん生命と合併というスキーム
の下、本社部門で1000名の要因を削減する。また、三井生命は三井住友銀行、住
友生命、三井住友海上の各社と全面提携し、販売チャネルの相互連携の強化を図
る。さらに三井ライフ損保を三井住友海上に統合するほかネット販社の廃止、社
員数を3年間で1200名削減、今年3月には三井住友グループ各社から総額1000億
円の基金を調達、2004年には株式会社へ組織変更する。

その他では大同生命が今年4月に株式会社として新たなスタートを切り、昨年
営業を開始したT&Dフィナンシャル生命(旧東京生命)と太陽生命(2003年に
株式会社化)を含めてT&Dグループを形成していく。また、4月には大和生命
があざみ生命(存続会社はあざみ生命)と合併する。

残る大手生保(日本、第一、住友、明治、安田)はそれぞれ本社社員のリスト
ラを含めた事業の効率化を図る一方、販売面での生損保クロスセリングの強化に
よって新たな展開を模索している。第一生命は安田火災・アフラックとの販売提
携の強化と同社の主力商品「堂々人生」のモデルチェンジと拡販、安田生命は事
業のアウトソーシングによる効率化、日本生命、明治生命は傘下損保(ニッセイ
同和損保、明治損保)との販売提携強化、住友生命は三井住友海上との販売提携
の強化といった具合だ。

◇新たな展開求められる年に
しかし、これら各社にとっても新契約の伸び低迷と保有の減少、逆ざやといっ
た構造に変わりはない。先の年頭訓示に見られる「信頼性の確保」と「コンプラ
イアンスの遵守」、「自信を持った行動」は大切なことであるが、(1)合併・
経営統合によって登場した損保各グループの生保分野への注力強化、(2)買収・
破綻生保のスポンサーとして登場した中堅外資系生保、(3)資産形成商品を主
力とする特化保険会社の登場ーなど様変わりする業界構造の中で、逆ざやという
負の資産を抱えた伝統的な生保会社に新たな展開が求められる年ともなりそう
だ。

特に上記生保のうち、グループの提携強化が打ち出された三井住友グループの
中で住友生命がどのようなグループ内の位置を占めていくのか、朝日生命を組み
込んだミレアグループと明治生命の関係強化はあるのか。また、第一生命の他社
との販売提携はどこまで進むのか、日本生命の損保戦略強化の方向や安田生命と
富国生命の提携強化はあるのかなど、これまで取り沙汰された方向がより明確な
形で現れてこよう。

◇新たなブランド作りが鍵
2001年は生保業界にとって「経営破綻と再生」の年であったが、2002年は「新
たなビジネスモデル構築」の年といえる。経営の方向は大きく変化しようが目指
すところはいかに顧客に信頼され、選択されるかにある。その意味では経営から
販売の最前線にいたるまで旧来の在り方から脱却した新たなブランド作りの年で
もあるといえよう。

(石井 秀樹)

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【4】webコラム「ホームページnyaoの勝手に保険講座から」  森田 直子
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ホームページから見えるもの(18)ITと、人の不安感

新年明けましておめでとうございます。2002年の幕開けとなりました。一年前
にinswatchの新年号の原稿を書いた事がついこの前のように感じます。昨年は高
速回線「ブロードバンド」の時代幕開けと言える一年でした。既にADSLを導入さ
れた方も多いと思います。今年はどんな一年となるのでしょうか。

◇営業マンの不安
さてITの目覚しい発展をとげる中でも、現場のお客様と接する私達は人対人
のコミュニケーションやフェイストゥーフェイスを大切にしていかなくてはなら
ない立場です。自分自身の心の中の、自信やあるいは不安といったメンタルな事
が営業の場面では大きな影響を及ぼす事もあると思います。
景気の回復の遅れも影響してか、この頃はホームページを通して業界の方から
悩み相談のメールを受け取ることもあります。不安感とどう付き合って行くかと
いう事も今の時代の課題かもしれません。

◇不安をバネに変える
4~5年前に比べ明らかに売上に影響が出ている、そんな危機感は誰しもが持
っているものです。正直な所私自身も同じ不安感を持っています。数年前と同じ
努力をしても同じ結果は出ない、時代の流れ上これはやむを得ない事です。今ま
でしなくても良かった努力や工夫をしなければならない時代が来たのだ、と頭を
切り替える必要があるでしょう。しかし、そうやって気持ちを切り替える事は逆
に大きな力となるものです。
以前、私が自信を失いかけた時「人は自信が無いから頑張るものだ、不安があ
るから必死になれるものだ」という話しを聞きました。その時心に響くものがあ
り、一大奮起して必死に仕事したところ大きな成果に繋がったという経験をしま
した。見込みもなく自信やる気も無かった自分が、その言葉だけでこれほど頑張
れるものかと自分でもあとから意外な気持ちになりました。

◇持っている力をフル稼動させる
その時私が何をしたかというと特に変わったことは無いのです。今まで一つの
商品しか勧めていなかった顧客に2件3件の商品を提案し、今まで溜まっていた
顧客のデータ集を何度も見返して見落としている見込みが無いかを探しただけな
のです。ただ、今まで自分が積み重ねたものを全力でフル稼働させたのですが、
その結果様々な工夫やひらめきが沸いてきて仕事にかなり熱中できました。そし
て、自分がもともと持っている力をいかに活かすのかが秘訣なのだと気がつきま
した。そのきっかけをくれたのは、自分自身の「不安感」だったのです。
そんな経験を通して「不安や危機感やプレッシャー」こそが自分を頑張らせる
エネルギーになる、という確信を今は持っています。

◇ITと人の気持ち
2002年は、昨年のADSLに続いて光ファイバーの時代が来るのでしょうか。もっ
と便利な時代がくる事がとても楽しみです。私達も、今まで自分が積み重ねた持
っている力と、新しい機械の機能をマッチさせフル活用する事で、益々お客様に
喜んでいただけるような仕事をしたいですよね。それもこれも自分達の気持ちに
かかっているのだと思っています。不安な時代からこそ、明るい未来が遠くない、
これからもそんな気持ちを大事にしていきましょう。

((有)エヌワンエージェンシー 代表)
「nyaoの勝手に保険講座」
http://www1.neweb.ne.jp/wb/n1agency/

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【5】RMの観点(15)                    岩瀬  治
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焼肉店とお客の「リスク回避」心理

「今日は、町内会の忘年会だから・・・」という家内の一言に思案したあげく、
高一になる息子を連れて、夕食は外で食べることにした。財布の具合もあること
だし、といってそれなりに美味いと思うものを食べたいし、と一応さまざまな観
点から検討を加えた結果、食欲の赴くまま、ここ何ヶ月食卓に供されることのな
かった「焼肉」を食べることとなった。街道沿いに数年前にできた「焼肉」専門
のチェーン店は、いつもは、駐車場が一杯で、テーブルも30分以上待たされてか
ら案内されるという状況であった。なんでもこのチェーン店は、株式上場も果た
し優良株として投資家の関心を集めている会社でもあるということだった。

◇RMの基本的手法
さて、自宅から車で数分のところにあるその店に着くと、まず駐車場で、思わ
ず声をあげてしまった。「ウワ‐、ガラガラじゃないか。」いつもは、駐車場の
入口で10数分待たされてから、隣の車をこすらないよう慎重にそろそろとハンド
ルを何回も切り返して止めていた駐車場がまるでガラガラなのだ。おかげで、楽
々駐車ができた。店のドアをあけるとレジの向こうにこれまた、人気の少ない店
内が見える。なんと、全席の3分の1程度しか客が入っていないではないか。レ
ジで待たされることもなく、いつもは気ぜわしげに動き回っている客席係が、す
ぐに案内をしてくれた。

メディアの流すニュースでは、狂牛病の影響で焼肉レストランの客足が激減し
ていると聞いていたものの、これほどまでに消費者に心理的な警戒感を与えてい
るとは思いもしなかった。行政の対応に信頼を失った消費者が取るべき自己防衛
策は、「牛肉を食べないこと」という極めて単純で初歩的なリスク・マネジメン
ト手法だったのだ。RM風に言えば、「回避」するという手法、要するに「危険な
ことは、やらない。だから、危険と思われる牛肉は食べない。」という行動だっ
たのだ。

◇要するに自己責任原則
メニューには、数種類のファミリーセットと単品商品が写真入で載せてある。
ここ数ヶ月、禁断のメニューであった牛肉を食するにあたり、ひとまずは、質よ
りも量で胃袋を満たそうと4人家族用のセットを平らげることにした。しかし、
結局のところ、それでも足りず、カルビを2皿追加し、ようやく、人心地をつけ
ることができた。

楊枝で歯の間に挟まった肉片をつつき出しながら、狂牛病に汚染された牛の肉
を食した場合どの程度の確率で、クロイツェル・ヤコブ病になるのだろうかと、
ふと考えてみた。おそらくは、これもゴルフ場で雷に打たれる確率よりも低いの
かもしれない。無論、汚染された牛の危険部位を大量に食した場合は、論外であ
るが。事故に遭う確率がはるかに高い交通事故に対しては、人々の生活の中で日
常化しているためなのか、ヒステリックな反応が起きたことはほとんどない。
WTCテロと同様、恐怖心は、現実世界の確率を極度に倍加する効果を持っている
のだろう。

(リスク・コンサルタント)

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【6】営業のこころ                      橋本 佳子
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新年の思いと脳の活性化

いつもと同じとは言いながら、年が改まると、気持ちもなにか改まった気がす
るものです。皆さんも今年は「こうしたい、ああしたい」というような思いがあ
るのではないでしょうか。実は、これはても大切な事です。経営の神様松下幸之
助さんは、あるときの講演で、「どうすれば、余裕のある経営をする事ができる
のですか」という問いに対し「それは、まず思うことです」と答えています。禅
問答のような話ではありますが、私は深く同感します。

自分自身、また周りの人を見ながら思うことですが、「こうしたい」という思
いの強い人は、いつのまにかその目的にかなった行動をとっています。目標に対
し、論理的な人は、長期、中期、短期の計画を立て実行しています。ところが、
感覚で動く人がいます。しかし良くその人の行動をたどってみると、寄り道をし
たりすることはあっても、「自分の思い」に向かって歩いていることが多いので
す。誰もが合理的に、計画通り行動できるとは限りません。しかも、計画通り実
行していても、現実にはうまく行かなかったり、思わぬ障害に出会うこともあり
ます。そのときに障害を乗り越えられるのは、「思いの強さ」ではないでしょう
か。

そう、若かりし日の恋を思い出してみて下さい。強い思いに駆られたときは、
「ライバルを蹴落としてでも!」と思いませんでしたか。そしてその恋の行方は
…?
残念ながら、このごろは、そんな恋をする人も少なくなったとか…。それでい
て「思い通りにならない自分の人生」に落胆したりしているのです。「余の辞書
に不可能という字はない」。勿論、誰しもがナポレオンになれるわけではありま
せん。それでも「思いの強さ、自分への信頼」これが目標達成の道への第一歩な
のです。

さて、今年の目標「あなたは決めましたか?」。まだの方は、「私は何をした
いんダー!」大きな声を出しましょう。ただ考えるだけでなく、言葉として音声
を発することによって、脳が動き始めます。他人と話をするのも脳の良い刺激に
なります。文字にして、MLに投稿するのもよいでしょう。そう、今年はそうやっ
て、脳を活性化させるだけでも十分かもしれませんね。「今年も宜しくお願いし
マース!!」
(元気の出る研修 代表))

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【7】代理店の座標軸                    佐喜本 敦子
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我が師はお客様(6)感謝の心

新年を迎え想いを新たにして仕事に向い合おうと誓いました。

◇契約をお断りしたケース
保険に本格的に関って17年目を迎えました。この間、当社から契約をお断り致
したお客様がおひとりいらっしゃいます。原因は事故における過失割合の意見の
相違にありました。しかも立て続けに事故があり、やはり過失割合で2度も揉め
てしまいました。保険会社の査定も当社も、契約者と対立してしまうという異常
事態となり、改めて契約者との関係やモラルリスクを再認識させられる出来事で
した。結局、更改の時、社長が出向いて「お客様の満足のゆく対応が出来ないお
詫び」をし、契約を辞退させて頂きました。

◇「心の通わないお客様」は守れない、が基本スタンス
さて、常々、お客様の立場で対応をすることを心掛けるとしても、「心の通わ
ないお客様」は守れないという基本的スタンスは必要ではないでしょうか?お客
様の我侭をそのまま鵜呑みにするのではなく、啓発できる代理店となる事を目指
すべきだと思います。数字は大切ですが、判断基準を誤ると些細な数字が代理店
経営の根本を揺るがす事態もあり得ます。この判断が的確にできる社員を育てる
事が大切で、「私は知りませんでした」で済まないのが経営者でありトップに立
つ者の責任でもあります。

社会が不景気になると、「黒」を「白」にして欲しいというお願いが出て来や
すくなります。毅然としてお客様に対応するのも代理店の大切な使命でしょうし、
「グレー」な案件なら「白」に近づける努力をするのも代理店の力量だとも思う
のです。

お蔭様で、当社の契約者は「筋道を立ててお話すれば理解していただける」方
ばかりで、本当に感謝しておりますし、この様なお客様しか結局は残らなかった
というのも事実です。いくら数字が大きくても、心の負担も大きい様では良い仕
事はできないでしよう。新規のお客様にも、当社の代理店としての基本的な仕事
のスタンスをご理解頂くようにお話しており、最初の対応が後の永いお付き合い
を可能にするものだと確信します。

この1年も、お客様や皆様との出会いを感謝し、誠心誠意をもって仕事に励み
たいと思います。業界も社会情勢もますます混迷を深め、大変な年となる事が予
測されますが、仲間とお客様の信頼とで乗り切りたいと願っております。

((株)ボアーズ取締役顧客マネージャー)
http://www.mighty.ne.jp/boaz/

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【8】半歩先行く代理店 -1                 鈴木 英世
《リスクマネジメント》
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アドバンス氏行状記-その18-代理店の提携・合併と生き残り=

代理店間でしきりに、連携とか合併が進行している。まるで、一社で生きてい
くことが不可能になったかのようなムードだ。これを加速しているのが保険会社
である。では、過去の保険会社の指導なり、業界の読みなりは当っていたのだろ
うかを振り返ることとした。

◇「取って10年取られて10年」の時代
古くは、「取って10年取られて10年」という火災保険の積みたてものの競
争があった。このときは20社ほどの保険会社が、勢力分布図が決まってしまう
ので、それこそ躍起になって代理店の尻を引っぱたき、これに負けるとお客さん
がなくなってしまいますよと警告をし警鐘を鳴らし、明日にもこれに乗らない代
理店は潰れるようなムードを各社で作り上げた。護送船団時代のある種の自由な
競争であったのだろう。しかし、その図も終わってみると従来の勢力分布図と同
じにしかならなかったので、各社ともある種の安堵と落胆を味わった。

代理店はムードに乗せられて一時期の増収による収益増はあったが、その後の
展開に変化は無かった。その後は自動車保険での競争と、積みファの競争の時代
があった。これもまた同じ分布図で終わった。
さて、自由化が進んだ現在の保険会社の誘導は何を呼びどんな変化がおきるの
だろうか?

◇大所帯・レベルアップの提言
過去の延長線上に無いことは確からしいが、顧客の対応に変化を呼ぶほどの変
化、つまり保険文化の革命でも起きない限り、保険流通の仕組みに変化がおきる
程度しか予想しえない。IT化が進んでも、保険会社とダイレクトに自分の保険を
どうするかを一社ごとに比較検討するほど暇人はいないし、居るのは僅かな保険
料を5から10%高いの安いのと比較をする客層である。これも集めてみれば大
きな数字だが、システムを組み人を使ってこの客層を一巡すると利益は出ても余
りたいしたことは無い。大企業は、機関代理店を廃止しない限り一般代理店にと
って客層とはなり得ないし、代理店が機関代理店を止めさせるほどのパワーを持
つのは容易ではない。

銀行なども本業の収益率よりも生損保の手数料の方が高収益なので、力を入れ
るが、カスタマーのニーズ・ウオンツに応え切るほどの能力は持てない。通販も
しかりである。しかし、コンサルタント風の代理店がどの位存在しているかとい
うとこれまた少ないのが現状である。そこで、コンサルタント風なサービスと保
険設計の出来る代理店を数多く抱えた保険会社が成功するとの方程式で、「能力
アップのために個人代理店は所帯を大きくしてレベルアップをしないと生き残れ
ないよ」という。

◇生き残りの王道は何か?
ここに問題があるのは、能力アップが重要なのであって、所帯の大きさが経済
効果とか能力アップを自動的に呼び込むものではないことに注意しないといけな
い。独立自治を目指した店主が、それなりに生計を立てられるようになっている
のに、何故に合従連衡をしなければならないのか?
室町幕府の最後のように、兼業武士は生き残れなくなりつつあるのか?でも、
もう代理店業で食っているので、副業代理店ではない。すると専業代理店で、乗
合をするしないは別として、現状での生き残りあるいは成長は皆無なのであろう
か?

保険会社の社員は、保険マーケットと流通システムの変化をどう読んでいろん
なことを言っているのだろうか?過去の進言は殆ど意味が無かったし当たらなか
った。代理店として成長を考えている者にとっては。今業界に流れている、クラ
スターだとか、合併だとか、提携などは本当に成功のあるいは生き残りの王道な
のであろうか?どんな時代にも王道などはありえないのだろうか?

◇得意分野の選定と市場性に明日を見つける
地球滅亡だの、大戦争でも始まらない限り、保険のニーズ・ウオンツは途絶え
ない。引き受け保険会社も必要だ。保険流通も必要だ。どんな流通組織がそのマ
ーケットに必要なのかがテーマであり、方法論として、所帯を大きくしろだの、
傘下には入れだのと言うに過ぎない。一匹狼的な代理店の寄り合い所帯は強いリ
ーダーを置かない限り良い結果を生まないだろう。
大きな専属代理店、大きな乗合代理店の姿は見え始めている。しかし、細々と
した成長力の無かった代理店を吸収してどこまで利益を確保できるのだろうか?
代理店手数料率が上がることのない中で、営業効率を重要視すると営業戦略は限
定されてくる。得意分野の選定と市場性で決まりだ。保険会社の社員でこんなこ
との話の出来るのが一人でも来ると面白いのだが・・・

業界にそれを求めるのは無理があるので、異業種の交流と店内の社員との討論、
顧問のアドバイスから明日の道を見つけ、今日まで当社を支えてくださったお客
様に更なるサービスを提供しつづけられるよう体力強化に励むことで新年を迎え
たい。
(サンビジネス東京(株)会長)

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【8】半歩先行く代理店 -2                 原  桂一
《マーケティング》
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IT時代の代理店マーケティング(15)
日本版401Kのマーケティング考察

昨年12月11日、厚生労働省は日立製作所・すかいらーく等15の確定拠出年金を
承認し、日本版401kが市場に初めてその姿を見せました。企業ベース以外は大和
証券・野村証券等の3グループが、数社の企業をまとめて1制度での承認を受け
ました。

◇JPICの汎用型販売モデルに注目
ここまでは自社及び自社グループ内での制度採用という形ですが、他に1社、
私たち保険代理店に興味深い形の制度承認を受けたのがジェイピーアクチュアリ
ーコンサルティング(JPAC)です。同社は年金・退職金コンサルティング会社とし
て承認を受けた年金規約を、自社だけでなくいわゆる外売りできる汎用型として
東京海上に商品提示及び運営管理を委託するビジネスモデルを採っています。東
海社ではこの商品を「東京海上なっとく401k総合型」として、自社独自の制度承
認を受けるには負担の大きい中小企業に広く販売することになります。

こうした販売形態は日本ではもちろん初めてなのですが、皆さんはこのニュー
スリリースを新聞でお読みになった時に、どんな感想を持ちましたか?もしかす
ると読み流していただけでしょうか?

◇販売力ある企業との業務提携方式
実は保険代理店経営のヒントがここに隠されています。以前は自社より大きな
代理店は昔から保険販売している先輩が多かったのですが、最近はマーケティン
グの工夫次第で大量販売ができ、収益の上がる経営が可能です。

その一つは、このJPCAのように自社の独自商品を、販売力のある企業と業務委
託して販売する形態です。これに似たものは代理店間の業務提携でも可能です。
これにつきましては来月一つの具体例を紹介します。保険代理店の場合は自店の
委託保険会社が持っていない商品を、持っている代理店と融通しあうことやマー
ケットの相互乗り入れなどができます。いわゆる紹介代理店の形態にも近いです
がコンプラ上の問題もありますので商品説明や手数料の支払い方などには今後の
研究が必要です。

◇複数代理店のグループ展開
顧客1社を複数の代理店が一つのグループとしてコンサルしていくという形で
の提携も信頼できて得意分野のはっきりしている代理店同士では可能です。お客
様は緊急時の連絡先も増えますし、相性の良い相談相手も見つかりやすいという
メリットがあります。何よりお客様の安心が深まるというのも大きな特徴です。
「あそこに任せておけば一番安心ですよ」というフレーズを互いに使うことはお
客様の信頼を高めるのです。

今までの過当競争では多くの場合逆に他店の悪口を言って契約を乗り換えさせ
たりしていましたから、これでは業界そのものへの信頼を損ねてしまい、さらに
は言っている本人の信用も高まらないのです。

◇任意共済モデルも台頭
さてJPCAの401k販売ビジネスモデルに似ているものとして代理店に関係するも
のでは任意共済もあげられます。企業のリスクヘッジや福利厚生のリストラとし
て欧米ではキャプティブがありますが日本型キャプティブと言えるものが任意共
済です。大手企業や企業グループ、または保険代理店グループ等が一つの共済会
を作り外売り型の約款を整備して汎用共済商品を独自の販売網で販売していくと
いうビジネスモデルは21世紀の代理店経営の新しい柱の一つになるという予感が
あります。

(有限会社セントラルファミリーライフ代表)

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【9】e-ビジネスと代理店経営                稲葉 幹雄
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保険会社のWEBサイトの変化

皆さん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

今年のe-ビジネスの動向を見るうえで、昨年の10月から年末にかけて出てき
た保険会社のWEB利用の変化が気になります。そのうち、第一生命と日本興亜
損保の「契約照会サービス」について少し見てみたいと思います。契約者は、W
EB上で、「契約照会サービス」を始め他のさまざまなサービスを受けることが
できるようになりました。

■<第一生命>2001年10月4日
第一生命のニュースリリース
●提携先商品も含めた、インターネットによる総合リスク管理・資産管理サービ

「NET総合照会」提供開始
http://www.dai-ichi-life.co.jp/news/nr01_23.htm
「ネット総合照会」のコーナー
http://www.dai-ichi-life.co.jp/wise/

■<日本興亜損保>ニュース2001年12月20日
日本興亜損保ニュース
●お客様のためのインターネットサイト『安心My.com(あんしんまいこむ)』の
サービス開始について
http://www.nipponkoa.co.jp/news/whatsnew/news2001_12_20_anshin_my_com.ht
ml
『安心My.com(あんしんまいこむ)』のサイト
http://www.anshinmy.com/

第一生命のサービスは生命保険会社のサービスですが、同社が募集代理店とし
て販売する安田火災の損害保険、アメリカンファミリーのがん保険についても、
顧客単位に一元管理する、というものです。日本興亜損保のサービスは、保険に
関する各種照会や契約に関する各種手続の申し出などを24時間行うことができ
る、というものです。

ネットを利用する「契約照会サービス」は、インターネットが登場したときか
ら当然考えられていたサービスであります。しかし、「契約照会サービス」をす
るには、保険会社のデータ管理が「顧客別」にできるようになっている必要があ
り、そこがこれまでネックになっていました。両社のニュースリリースを見ると
その事情がよくわかります。

第一生命のニュースリリースは、「顧客データベース」の稼働開始というニュ
ースと同時になされています。そのニュースリリースの中に、
「平成13年10月9日から、一層の競争力強化・お客さま満足の向上を目的と
して、当社取扱い商品のお取引状況、および、お客さまからのお申出内容等を統
合的に管理する「顧客データベース」を稼働いたします。」
という表現があります。

日本興亜損保の場合も、ニュースリリースに、
「『安心My.com』のサービス開始にあわせ、お客様のご契約・事故などの情報、
お客様の各種ご照会・ご要望についての情報を一元的に管理するための「統合顧
客管理システム」基盤を開発しました。」
という表現があります。

上記のサービス内容をサイトで実際に見る限り、保険の内容は基本的な内容の
みが参照できるに過ぎません。より詳しい内容は、証券を見るか、代理店(営業
職員)や保険会社へ問い合わせることになっているようです。しかし、一歩が踏
み出された意義は大きいと思います。

今後の発展を見守りたいと思います。保険代理店としては、情報サービスのい
わば中抜がスタートしたともいうことができ、このようなサービスにどう関わっ
てゆくか、が問われます。

(有限会社オフィス・イナバ代表)

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【9】代理店ダイアリー                    武山 敏彦
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「成り番、休み番」 6~真実(ほんとう)の信用力(2)

指定された時間に遅れないように、10分前に到着いたしました。叔母が厳し
い顔つきで
「いらっしゃい、義兄さんからも電話入っていたわよ」
とだけ告げ応接間に通してくれました。
(親父が電話してくれていたのか・・・)

しばらくすると、せっかちな足音が聞こえてまいりました。
ダン、ダン、ダーン・・・。
(あぁ・・・いよいよ 来る!)心臓の鼓動が高鳴ります。

次の瞬間、ばーんとドアが開きました。
恐る恐る立ち上がりますと、叔父が恐い顔をして黙ったまま(まぁ、座れ〉と
いうように手で促しました。
叔父:「いくら、借りるんだ?」
私 :「はい、300万円です」
叔父:「300万円借りるのに保証人3人か・・・」
「武山さん、あんたよっぽど信用が無いんだな」

そして、叔母の方を見やりながら
「俺は今まで、人の保証人になった事は一度も無いんだ。でも、こいつ(叔
母)の甥だし、昨夜、義兄さんからも息子をよろしく頼むという電話があった
からな」
「武山さん、ハッキリ言うけど俺はあんただけだったら断わる。でも今回、義
兄さんに頭を下げられたから引受けることにした。勘違いしないように」
そういって目の前に 印鑑証明書を差し出しました。

私は、自分でも思ってみなかった展開にびっくりいたしました。
(まさか、この叔父が保証人になってくれるなんて・・・)
叔父は続けて、次の事を守るように言いました。
1.支払いは一日たりとも遅れてはならない
2.完済した時、必ず報告に来る事
3.今回の経験した初心を生涯忘れてはならない

そして
「この俺に印鑑証明書を取りに行かせたんだからな。その責任は重いぞ。俺に
恥をかかせるなよ」
「今回の件は親父に感謝しろ」と言ってくれました。

前回書きましたように、私はこの叔父が本当に苦手でありました。老舗の権威
を嵩に着た冷たい嫌な人だと思いこんでおりました。しかしこの時の事で、人
は表面だけで見てはいけない、という事を学びました。

叔父は叔父なりに100年も続いた老舗の暖簾を守る事に必死なのだと思いま
した。叔父には叔父なりの苦労があるんだな・・・と。
そして何よりも、叔父が父をこれだけ信用していたという事実に心を打たれま
した。

帰り際、黙って座っていた叔母が口を開きました。
私の目をしっかりと見つめ、真剣な眼差しで
「敏彦さん、経営者はいつも責任を負うものなのよ。だから、お父さんが健在
な内に色んな事を素直に学び、真実(ほんとう)の信用力と実力を身につけて下
さいね」
そういって深々とお辞儀をされました。
私は、本当に身の引き締まる思いで御礼を言い叔父の店を辞去いたしました。

そして再び公庫の面接室
担当官に、第三者の保証人が得られた事を報告いたしました。
「保証人は会長さんの義弟さんだそうですね」
「当公庫とも長年お取引いただいているお客様で申し分ございません」
「私の担当はここまでです。あとは融資が決定次第、手続きがとられると思い
ます」

私は、何かこの担当官に話しかけたい気持ちがありましたが、余計な事は言わ
ない方が良いと思い、当り障りの無いご挨拶をして事務所を出ようといたしまし
た。
と その時です。
「あっ、武山さん ちょっと!」
「はい?」
と言って振り向くと、今まで厳しい顔つきだった担当官がニコニコ笑って立って
いました。
そして、
「本当は、一担当官として特定のお客様にたいしてこんな事を申し上げるのは
まずいのですが、一言だけ・・・」

「武山さん、あなたが次回ここにいらっしゃる時は多分きっと私はここにいな
いでしょう。でも、その時は必ずあなた自身の資産をお持ちになられることを約
束して下さい」
Oさんと仰る担当官とは、その後一度もお会いすることはありませんでした。
しかし、私は8年前のこの日の事を一生忘れられないと思います。

若輩の私にたいして甘やかさず厳しい態度で接して頂いたお陰で現在の自分が
あると感謝しております。
経営者として初めて洗礼を受けた日、背中に一本芯の通った日、そして自分自
身の無力さ、非力さを骨の髄まで知らしめられた日、親の恩と周りの方々のお陰
さまを感じた日。私自身の原点ともいえる体験でした。

その後も言葉に尽くせぬ、様々な辛い事も沢山経験致しましたが、何故かこの
借り入れ時のせつない思いや、瞬間、瞬間のやりとりなどが昨日のことのように
蘇ってまいります。
平成6年11月、石巻・仙台を結ぶ高速道路降り口に造成された新興住宅地に
160坪の土地を取得いたしました。それが現在の事務所と自宅のある場所です。

(宮城県石巻市あけぼの3-9-1 (資)森山保険)

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【10】保険と流通の今                     中崎 章夫
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あいおい損保の3段階専業代理店大型化構想

保険会社が、今後の地域営業戦略を展開する上で、専業店の事業化モデルを明
確にすることが必要になってきている。こうした専業代理店の事業化戦略をかな
り明確に構築し、すでに高層から具体化の段階に入ったケースも出てきている。

◇専業店大型化への3段階示す
今回紹介するあいおい損保の試みは中でもユニークだ。同社では、これからの
専業代理店の大型化プロセスの3段階構想を掲げ、事務委託(第一段階)→事務
協業制度(第2段階)→総括代理店(第3段階)を通じて10億規模の大型代理
店に至るコースを明確にしている。

この制度の狙いは、代理店としての機能を強化・拡大することで、代理店手数
料以外の収入確保の機会を提供しようというものだ。保険会社の課支社で行って
いた機能の一部を代替してもらうことで、保険会社としての効率化を図るととも
に、大型代理店に引き上げる道筋を用意しようというものだ。

◇メールカーの巡回サービスも
いずれも同社の事務委託機能搭載の代理店システム(現状AOA)を導入した一
定以上のクラスの代理店が対象となる。物流情報システムのインフラ整備が同社
の専業代理店支援のポイントで、宅配業者との提携によりメールカーが毎日巡回
し帳票類の回収を計る。

◇事務委託
第1段階の事務委託は、事務委託代理店となり、従来課支社で行っていた計上
業務やそれに伴う付随業務を一部代替するもの。申込書などの計上に加え口振り
などの付帯原票、入金票のデータ入力・伝送と挙績インプットを行う。毎月委託
報酬が代理店手数料とは別枠で社費削減ファンドから支払われる。

◇事務協業
事務協業制度は、事務委託代理店がその業務を他の代理店分まで拡大するもの。
事務代行代理店となり内務事務共同処理制度を利用することより、パートナーと
なる代理店の内務事務(精算資料作成、収支明細表記帳含む)を代行するもので、
パートナー代理店から内務事務受託報酬を確保できる。また、パートナー代理店
は、低コストでわずらわしい内務事務から解放され営業に専念できる。

◇総轄代理店
総轄代理店モデルは、事務協業をさらに発展させ、保険会社の営業店機能の一
部を代替し、一定地域の代理店を擁し間接的に営業するとともに自らも代理店と
して保険募集を行うものだ。参画する他の代理店の後方支援(客先への同行や企
画書作成など)をする間接営業と、直接営業の2つの機能を有する。

この総轄代理店は、一方で、事務・物流の中継基地としての内務担当者の側面
を併せ持つ。メールカー巡回により、保険会社と参画代理店の物流(領収証、継
続申込書、各種印刷物、システム帳票等)の中継基地の役割を担う。インターネ
ットによる帳票類等の発注配布作業はすべて総轄代理店が担う。まさに「人件費
の物件費化(アウトソーシング)」をこのモデルの導入で実現していこうという
のだ。保険会社から総轄代理店業務受託託報酬を受領する。

すでに2001年4月広島でパイロット店が誕生した。現在同一地域の代理店
40店近くが参画。傘下に入る対象代理店は同地域の小規模代理店だ。来春メド
にさらに数店が総轄代理店モデルの準備に入る、という。

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■編集後記
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本文中にもお知らせしましたように、保険代理店経営実態調査を今週金曜日よ
り始めたいと考えています。自社の位置付けが分かる良いチャンスですので、1
999年度と2000年度の決算書(青色申告)をご用意の上、積極的にご参加
頂くようお願いいたします。詳細はメールで金曜日にお知らせします。

あけましておめでとうございます。2002年、保険業界各社は昨年に引き続き新
たな方向を目指して揺れ動いてゆく年となりそうです。保険の販売も生損保クロ
スセリングの強化に加え、多様な効率的チャネル追求という保険会社の戦略のも
とにマルチチャネル化が進行し、販売手数料は減少の方向にあります。保険会社
本体が新たなビジネスモデルを追求する中で、代理店の皆様にとっても経営の形
態や販売手法、販売商品の面で新たな展開が求められてきているといえましょう。
「inswatch」が皆様にとってよりお役に立てるマガジンとなるよう一層の努力
して行く所存です。是非今年もご愛読とご継続をお願い致します。(石)

今週から仕事始めという方もいらっしゃるかと思います。みなさんどんなお正
月休みをお過ごしでしたか?私は年末に高熱を出して病み上がりのお正月でした。
それでも家族のためにおせちを用意したりお雑煮を作ったり、初詣にもなんとか
出かけて季節行事をこなしました。これも母親としての仕事だ~!と思ってヘト
ヘトになりながらのお正月でした。でも、後半は体調も戻って家族で外出したり
楽しい時間も過ごせて満足です。おみくじも大吉だし今年もいい年になりそうな
予感。本年も、どうぞ宜しくお願いします。(森田)

永年正月に書いてきた賀状をなんと31日までに送付できたので、正月は充実
していた。特に高1の娘と行動をともにできたことが嬉しい。1日は茨城の実家
に日帰りで年始挨拶、2日は、急に思い立って娘と話題の「ハリー・ポッター」
を松戸まで見に行く。魔術などで子どもの教育に悪いから見ないように、との近
所の方のチラシが入ってきたので、どんなものかとの興味もあったが、何の事は
ない、如何にも英国の子供向け痛快娯楽アドベンチャー映画仕立てのものでそれ
なりに面白かった。「本のほうがよかった」は娘の評。全席指定を知らずに出か
けたので2時間以上の立ち見はつらかった。3日は群馬の実家にこれまた年始の
挨拶、ついでに太田の子育て呑龍上人で有名な大光院に娘とお参りに。4日は江
戸川沿いのサイクリングコースで一人ママチャリを3時間乗り回し尻がたいそう
痛くなった。夜は新松戸で、訪ねてこられた松戸と船橋の代理店の方々と急遽楽
しい年初の飲み会に。5日は朝からこれまた娘と埼玉県川越に出かける。春日の
局や家康、秀忠、家光の3代に仕え黒衣宰相といわれた天海僧正ゆかりの喜多院
にお参りがてら、境内にある五百羅漢を見た。内緒話をする羅漢は有名だが、酒
を注いでもらっているのがいたり、横になってマッサージしてもらっているのが
いたり、なかなかに人間臭く面白い。喜多院は3日のだるま市でも有名で、娘は
せっかく来たのだから、と赤いだるまを所望。あわせて難儀している我が家の受
験生のために白いだるまもあわせて買った。川越は小江戸というだけあって散策
するにはもってこいの街であちこち見て回った。市役所前の「百丈」というなか
なか美味しい手打ち蕎麦屋も発見。6日はプールで初泳ぎ。また一年が始まる。
(中)

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保険代理店専門電子メールマガジン【inswatch】Vol.73

発行日    毎週月曜発行(年52回発行)
発行元    有限会社 インスウォッチ
発行人    長  忠
編集人    石井 秀樹  中崎 章夫
WEBマスター 稲葉 幹雄
編集協力   森田 直子
URL  http://www.inswatch.co.jp

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カテゴリー: inswatch weekly | inswatch Vol.75 (2002.01.07) はコメントを受け付けていません